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3/20 もののみかた

当館での展覧会企画のテーマは、絵画、染織、工芸、文学、学術とさまざま。これは館長の「著名なものやすでに世に流布したものばかりでなく、まだあまり知られていない優れた作家や作品を世に問うことや、対象を絞った分野のものをご紹介することも、美術館や博物館の大切な役割である」というモットーに基づいています。
企画展ごとに全く異なる世界に触れていただけることが、当館の特徴の一つです。

展覧会を作る側としても企画展ごとに驚きや発見が絶えませんが、これまでの中で印象深いテーマの一つが学術(中でも理系)に関するものです。

2001年夏開催の
生物生態画のパイオニア 牧野四子吉(まきの よねきち)と動植物たち」。
代表的な動物図鑑の挿絵や、『広辞苑』の動植物の挿絵を担当された方なので、多くのみなさんが知らず知らずのうちに彼の「作品」と出会っているはずです。
(ちなみに四子吉さんは京都との関わりが深い方です。昭和4(1929)年、京都帝国大学(京大)理学部動物学教室から生物画制作を依頼されたことがきっかけで、この道を生涯の仕事とされました。)

展覧会開催にあたり四子吉さんと親交の深かった方や、動物学、植物学ご専門の先生方に実行委員としてご参加いただき、ご指導・ご協力いただきました。(昨年冬にご逝去された京都大学名誉教授、日高敏隆先生もそのお一人です。)

四子吉さんは図鑑の挿絵画家としての仕事や、京都帝大(京大)で先生方の生物調査研究の論文や調査書の挿図にも携わるなど、まさに学術方面で活躍された方。そういうわけで展示も学術的に系統だてて構成することが決まり、展覧会準備は四子吉さんの挿絵を分別することから始まりました。
動物の種類をまず無脊椎動物、脊椎動物に分け、脊椎動物を魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に分け、とここまではついていけるのですが、さらに哺乳類は、サル、ヒトなどの霊長類、イヌ、ネコなどの食肉類、ウマ、バクなどの奇蹄類、コウモリなどの翼手類・・・(まだまだありますが割愛)へと分けてゆく作業が続きました。
文系出身の一美術館スタッフとしては、ただただ途方に暮れた覚えがあります。

それでも朝晩、美術館に通って下さるご専門の実行委員の先生方とともに1000点を超える原画と向かい合うことで、生物画の魅力にひきこまれていきました。中でも魚類の描写には目をみはるほど! 鱗ってこんなに美しかったんだ、と虫めがね片手に見入ってしまう日々でした。
作業を通じて知りえた動植物にまつわるエピソード、先生方が本当に楽しそうに、夢中になって動植物の原画と向き合っておられる姿、そして初めは「魚類」としてひとくくりにしかみえなかった何百もの魚の原画が、一点一点個別の魚としてみえるようになった瞬間は、今でも脳裡に焼き付いています。

ともすれば自身の興味や、世間で注目度の高い分野に関心を寄せがちですが、時には全く関心のない分野に偶然でも必然でも足を踏み入れることで、これまでと違った「もののみかた」と出会うことができます。

今年は、これまで敬遠していた分野の展覧会や本、映画、演劇などと距離を縮めてみませんか。

当館の展覧会を、「こんなもののみかたがある」「こんな仕事を成し遂げた人がいる」といった発見の場としても、みなさまにご利用いただければ幸いです。

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